2012年3月4日

維新ニッポン!

「地方を変える、日本を変える」、そのどちらの場合においても「地方主権」なくして成し得ない。社会の成熟化が言われ、少子高齢化が進む現在の日本において、中央集権体制によるメリットは急速に減少している。過去から続く利権、既得権を断ち、国民へと再分配しなくてはならない。そして人々の幸福を考えるとき、地方本来の魅力と活力を取り戻すことが重要となる。大きくこれら二つの点において、日本は今まさに「地方力」を必要としている。

■国民の機会平等

これまでの政治に対する責任は、国民側の選択責任に帰する。しかしその国民の選択能力は、社会に影響を受け形成される。これが示すところは日本の民主教育の欠如と、地方の特性を切り捨て画一化された政治、経済、そして教育体制にあると言える。他の先進民主国と異なり、日本における民主化は内から始まった「民主革命」ではない。明治維新、戦後新体制とも、外国政府によって改革を迫られ、一部のメンバーらによって人工的に造られた制度的民主主義なのである。

この持ち込んだ日本の民主資本主義は、今も一部のメンバーに膨大な経済的恩恵をもたらしている。それらは支配層となって既得権を生み、その利権構造は形を変え、プレイヤーを替え、国民生活を疲弊させている。富と権力は集中、固定化し、国民の機会平等を奪い続けている。リスクとリターンの関係がアンバランスな形で存在し、既得権者らは低いリスクで大きなリターンを得、持たないものはハイリスク、ローリターンな競争を強いられている。民主国らしからぬ利権継承を断ち、国民が真の機会平等を手中にするには、何よりも現在の中央集権体制を変えなくてはならない。それなしに民主国としての日本に、持続性のある明るい未来が訪れることはない。

■歴史ある地方の魅力

失ってはならない地方の魅力と、人々の幸福について考えるとき、これまでの「全国あまねく発展」という政策は、本来バブル期の終焉とともに、大きく舵を切らなくてはならなかった。明治の挙国体制、昭和の高度成長、平成のバブル経済を経て成熟期を迎えている今、12千万という単位を一律に扱うことに、やはり大きな無理がある。日本国民は、既にある程度の豊かさを経験し、個人、小規模企業レベルにおいても世界で飛躍可能な知識と能力を獲得している。そのような国民の幸福、そして人生を一中央政府が計れるものではない。

地方の魅力、地方の幸福、それは地方自身が一番よく知っている。言語を始め、芸術、職人技、生活様式に至るあらゆるものに浸透している地方特有の文化は、日本本来の美しさだ。これからの日本は、地方が持つ価値観、歴史に裏付けられたアイデンティティが、あらゆる場面において体現可能な環境を創らなくてはならない。伝統とコミュニティを尊重し、地域住民がプライドを持って人生を営むことができるようにである。そしてこのことが地域の潜在能力を高め、地域経済の活力となり、理想的な地域、地方の発展につながってゆくのである。

■地方主権

最終的な形としてはやはり地方主権、中央には日本国という枠組みを留めるに必要最低限の機能を残し、その他全権を地方へ移転すべきである。日本は改憲なしに、国防等、結局は米国関与から完全に逃れることはできない。このように両国間が完全なる均衡関係にあるとは言えない環境下、中央政府に全権を置く現在の体制は、外交上の大きな「デメリット」を抱え続けることになる。日本に対し大きな影響力を有する国が、戦略的な方向性を持たない日本の中央政府と折衝に当たれば、これまでがそうであったように、地方市民の意向を切り捨てた政策に傾くことはそう難しい事ではない。

日本が西側諸国等にひいきにされた冷戦期や、隣国は後発国、共産国などといった甘い環境はとうの昔に過ぎ去った。数世紀、数千年に渡り、世界を股にかけてビジネスを営んできた中国やインドの復活を前に、日本はこれからも国家一丸となって輸出産業従事型国家を運営してゆくのか、各地方がその特性を活かした地方中心の国家に再構築するのか、あるいはその両方のいいところを折り合わせた国家構造であるのか、その選択をすべき時が来ている。そしてこの重要な選択は、今のままの中央政府が全国一元的に行うのではなく、市民の人生を責任ある形で見守ってゆくことのできる各地方政府が行うべきである。主権を持った地方政府は、その身近な地方市民に監視され、自由と責任、権利と義務の関係を曖昧なものにすることない民主政治、民主社会を確立しなくてはならない。

地方によってはドイツのような工業大国型社会を目指し、ある地方はスイスのような職人大国型社会を目指し、ある地方は観光、環境、農業を目指すなど、地方同士その特性を競うことで、日本は素晴らしく魅力的で、心底豊かな国になれると確信している。震災により壊滅的ダメ―ジを受けた東北の被災地へは、メモリアル的要素も含め首都機能移転を考えるべきである。

現在、残された時間の中で、比較的短期に中央の改革、すなわち利権改革を推し進めるには、これまでがそうであったように「外圧」が必要である。中央にとって一番近い「外」、それは地方である。また地方は日本の「内」でもある。まさに地方力こそが今必要な外圧であり、日本の内なる民主革命に他ならない。先進国として、非暴力かつ政治的に利権構造にメスを入れ、国家構造そのものを国民が望む形に変えることができたのなら、世界は日本の「チェンジ」に対する称賛を惜しまないことであろう。