2015年6月19日

世界の金融システムに新たなステージ ― SDR入りする人民元 1/3


■新SDRを前に自由化される人民元

2015年はSDRの内容を再確認する年にあたる。IMF5年毎に、その構成通貨と比率を見直していて、今回は、2010年には見送られた人民元のSDR入りが言われている。

AIIBや一帯一路構想に見られる通り、この先も人民元の影響力は増す方向にある。人民元のSDR入りは、先進各国が中国との不毛な対立を避けるのと同時に、SDR基盤強化への貢献が期待される。

次世代SDRが発効されるのは20161月。それに向けた取り決めが今秋予定されているが、そのIMF会合に先駆け、人民元の自由化があるだろうか。

国内外のロビーを抑え、何かを犠牲にしてでも、中国現政権が自由化の道を進むのか見ものである。仮に自由化なくSDR入りを果たせば、それは世界における中国の政治力、影響力の強大さを物語る。

今秋以降、この一連の動きを見て、世界における中国の政治力を次のように測ることができる。

政治力・影響力
SDR入り
自由化
強大
×
やや低
×
×
×


IMFのアプローチ

一方、中国側が、SDR入りをどこまで望んでいるかという見方もできる。長期ビジョンを持つ中国が、ここで準備通貨入りを焦る必要はないのかもしれない。「深入り」することで責任が増し、政策の自由を奪れかねない。日米メディアは中国による「切望論」を掲げるが、そうとばかりではなさそうである。

言われているように中国経済がいずれ米国を上回るのなら、米ドルがそうであったように、準備通貨としての旨味を後からでも「総取り」できる可能性が残されている。自ら進んで後の果実を分かち合い、今から政策の自由を奪われに行くこともない。

よって今回のSDR入りは、上表の最上段の場合以外ないと見ることができる。それには、準備通貨としての信頼性を高めたいIMF側からのアプローチがあり、それに対し、中国が協調を示す場合によってのみ成立する。日米英等の島国家では、「協調」が政策の中心に据えられることはないが、大陸各国にとっては国家存亡を左右する重要なノームである。


■人民元のSDR入りが意味するもの

人民元のSDR入りは、各国の対外準備通貨(世界基軸通貨)が米ドルからSDRへ移行する準備段階に入るものと捉えることもできる。いずれ本格的な移行が始まれば、世界に大きな変化が起こる。これは、ドルの信認が真に損なわれる前に完了していなくてはならない。

各国が保有する米ドル、ドル建て資産の総額は天文学的な数字となっている。いわゆるペトロダラー(オイルダラー)のように、米国とは直接関係のない世界の交易、資源取引にも、米ドルが貯えられ流通している。これが動くことで世界のお金の流れに歴史的な変更が生じる。

金融市場では対ドル取引が減少し、「対SDR取引」に集約される。米国はドルの価値を保つため、余ったドルの回収、米国債の買取り(借金返済)に奔走する日が来るかも知れない。場合によってはこれまで貯め込んできた「ゴールド」を放出するだろうか。


関連ページ: