2016年1月24日

次世代準備通貨、金融秩序を巡る駆け引き― 「株価依存」の経済が失うもの ②


■「開かれたG7」を待つ中国

米国経済、そして国家そのものの最大の支えは、準備通貨の特権、「無限の借金」に他ならない。一たび、世界がこれをやめようとなれば全てが逆回転する。

中国が号令をかけるわけではないが、最大保有国がその保有量を減らすことで世界が呼応し、米国債売りが加速する可能性も否めない。

日米財政の根幹となる米国債の価値が下がり続ければ、日本においては外貨準備が急速に目減りし、国力そのものが根底から揺らぐ。
 
しかし一方で、中国も米国景気の健全性を支持する環境にある。

米国が大きく揺らぐことは、今も発展途上にある中国経済の重要な「喚起役」が勢いを失うことにつながる。中国が世界秩序の急激な変化を望む理由はなく、ましてや米中戦争など到底あり得ない。

実情は、金融市場、株価維持に振り回されるG7の国家運営が、中国にまたとない機会を与えているということである。

これまでG7が阻んできた中国の世界秩序への進出、「責任」ある形での金融秩序へ参加が、その粘り強い交渉を経てようやく実りを得ていることを見れば、多くのことが中国本位に動いていることが伺える。

昨年、世界が支持したAIIB、完全な自由化がないままの人民元のSDR入りなどはまさにその象徴である。中国はこの機を捉え、今後とも世界秩序への責任ある参加を「必要な分だけ」順次拡大させていく狙いでいる。


■脱ドルペッグと通貨バスケットへの連動

昨年、中国人民銀行は脱ドルペッグの意向を公にし、その後、明確な表明なしに通貨バスケットへの連動に切り替えたようである。

金融危機以降も、人民元は、対通貨バスケットでは一貫して上昇している。「通貨安戦争」には目もくれず、より多くの通貨に連動させることでの「信頼獲得」を目指していることが伺える。

この先もし、米ドルが世界準備通貨という特権を失えば、史上最大の借金大国という現実に直面し、ドルと米債は非常に高いレベルの投機的水準にあることが取り沙汰される。

投機的水準にある米ドルと米債から人民元を切り離すことで(ペッグを大幅に緩和することで)、それへの準備を今から進めていると捉えることもできる。

米ドル、米債を売って金保有を積み上げ、SWIFTに代わる(または補完する)システムの構築を目指していることなどはその表れだろうか。

当然、これを見越したマーケットは先回りする。昨年、年央からの金融市場の不安定な動きに対し、日米メディアは中国景気の「減速、資本流出」を強調しているが、これは批判と言うよりはむしろ、悲鳴に聞こえはしないか。

グローバル時代、誰かが勝者となることはない。一国の身勝手な政策が周囲を疲弊させ、結局はそれが自らに跳ね返るという現実がある。それをみなで繰り返しも出口は見つからない。

我々が進む道は、「協調」以外にないのである。