2012年6月4日

円は安全資産などではない

ここ数年メディアが頻繁に使うフレーズ、「安全な資産として円が買われている」。世界のマネーが円に向かっているのは事実であるが、ギリシャ化も言われ始めている今の日本の通貨を、本当に「安全な資産」などと呼べるだろうか。「円は過大評価されている」と聞けばやや控え目に聞こえるが、それもおかしな表現である。

周知の通り、現在起こっている円高は日本の将来が買われているわけではない。政府、メディアはあえて「資産」という言葉を用いるが、実は金融の世界ではいかなる資産も存在しない。マネーを扱う当事者らは単に数字を扱うに過ぎず、従って数値の上げ下げを予測し、それを追うのが仕事である。

金融危機以降、FRBECBが自国通貨の増発を行っているのに対し、同期間、日銀による円増発はドルやユーロと比較して極わずかに留まっている。仮にある企業が、成長につながるスキームを示さずに増資を行えば、一株利益の希薄化を嫌って株価は下落する。これと同じことが通貨にも起こる。

これまで世界の中央銀行は、企業や投資家を安心させる程のスキームなく自国通貨の「増資」を行っているようなもので、市場はそれを嫌う。そしてそのスキームは愚か、日銀が自国通貨増発競争、すなわち通貨価値切下げ競争に勝てる土壌と能力がないと市場はみている。もちろんそれには根拠があってのことである。膨大な借金を抱える日本において、それは極めて「危険な道」と考えられているからである。

安全資産と言えば聞こえはいい。政府、メディアが口を揃えてそう言えば、多くの国民はそれを耳にし、少なからずとも嘘とまでは考えない。何度も言うが、日本は主義としての民主制度はあるが、その民主性は非常に乏しい。政府、メディアは円が安全であるかのように発しつつも、裏では家族親戚ともども、自己資産を国外逃避させているのではないか。いつ無責任な指導者が現れ、捨て身の金融緩和(=円急落)を行わないとも限らない。実際にそのようなことがあれば、日本経済はもって10年、早ければ3年以内に消滅に向かう可能性大。