2013年1月7日

メディアの右傾化が招いた民主党の大敗

■ナショナリズムの高揚に揺れた民主党

今に始まったわけではない領土問題。しかし昨年、この領土問題で日本は揺れ、国家全体が瞬時にナショナリズムに沸いた。メディア各社は金型を押したように右寄り一色となった。政治・メディアがそれを掻き立てるといういささか先進国らしからぬ偏りを浮かび上がらせた。

民主党が右に寄っているという「誤った印象」を払拭する報道もないまま、右傾化したメディア報道はまるで左派が消滅したかのようであった。こんな中、衆院選へと突入、自信を失っていた民主党はメディア、国民の右傾化した視線を意識せざる得なくなり、隣国や世界に対し態度を硬化させた。

「冷静な対話こそが解決への道、過去について幾度でも隣国と話し合えばいい」という、本来、民主党から発されるべき言葉が、クローズアップされることのないまま選挙戦に突入したことで、民主性を重視し、真に民主党を支えた有権者は強い閉塞感を覚え、困惑し、行き場を失った。あまり多くを発しない、大声で物を言わないマジョリティの日本の有権者(本当の世論)はここにあったはずである。そのことは戦後最低の投票率となった今回の選挙で、自民党が大勝利を得るに至ったことに表れている

■まさに日本の選挙は水物、運命を決める分岐点がここそこに

これとは逆に、「対話路線の重要性」がよりクローズアップされ、これを第一に世論が支持したのなら、民主党は「対話こそ解決への道」との路線を維持したはずである。そして今回の選挙も全く違った枠組みで始まったことも考えられる。維新の会は石原氏の入党を断固拒否し、みんなの党、民主党との三者連合も実現したかもしれない。そのようなことが起こっていたのなら、時間はかかるとも、日本の未来が非常にいい方向に進み始めたに違いない。残念なことに、日本では「絶対に右傾化してはならない」という立場を支持するグループがなくなってしまったか、今では表に出るのが難しい環境に陥っている。

皮肉なことに右寄りとされていた当の自民党は、選挙後、早々に中韓へ特使を派遣し、対話姿勢を示すに至っている。日本は保守・旧体制に再度引き込まれていくという結果を生んだのが今回の選挙なのだと思う。仮に参院選でも同じことが起これば、結果的に「一党独裁体制」に近い状態の復活も否定できない。過去の時点で太平洋戦争開戦を分けた「分岐点」が存在したのなら、今回の選挙もまた、日本の未来を分ける大きな分岐点であったのかもしれない。

■隣国への強い対抗心、先進国としての矜持を持たない日本

昨年、駐リビア米国大使らが駐在先で殺害された。しかし米国政府はもとより、メディアもこれを冷静沈着に報じた。本来、他国の脅威を脅威たるものにせしめることなく、国民のナショナリズムの高揚を和らげるべき立場にあるのが政府、メディアである。これが逆転してしまっている今の日本社会は、いかに「成熟」から程遠い状態にあるかを映している。

中韓隣国への対抗心を剥き出しにした政府、メディアの論調は、先のマジョリティの国民に対し、「時代は左派・改革姿勢を支持しない」という印象を与え続けている。さらに今も、一部の日本人の間で根強く残る「神国思想・選民意識」が右傾化を許し、それが国際社会からの脱落へと向かわせている気がしてならない。