2013年9月21日

成熟国を目指す日本、憲法曲解で改憲断念か

「憲法曲解」というリスクを取ってまで、集団的自衛権を手にしたい日本政府の思惑は二つ。1.米軍支援を打ち出すことで同盟関係を強化し、東アジアにおける日本のプレゼンスを高めること。2.米国との蜜月な関係を維持し、同国が世界に持つ権益に今後ともあやかり続けること。これらは安倍氏が目指す、日本の軍事産業育成にも大いに貢献する。

しかしこの2点は表向きのストーリー。深読みすれば、国内向けには集団的自衛権獲得による「国益」を訴え、「軍行政」サイドの要求を満たす一方、裏では改憲を断念し、中韓、世界への配慮とする判断だろうか。もちろん、それこそが「政治」というものである。

景気回復途上の今は「とりあえず仲良く」であり、五輪も踏まえ「日本は平和の国」を世界にアピールする必要がある。「初回」の東京五輪時のように、世界を敵に回し、また「自ら辞退」などということは許されない。何よりも、改憲を先送りすることで今後とも「なんなら改憲するぞ」は、東アジアにおける日本の強力なカードであり続ける。

逆に中韓トップレベルでは、日本にこのカードを持たせまいと考えているだろうか。中韓にとって日本の「軍拡改憲」は、世界を味方につける大きなチャンスとなる。自国の軍拡へ向けた動きが理解され、対日本警戒行動に正当性を与えることができる。中韓は日本の軍拡改憲を表では非難しつつも、裏では「その気ならどうぞ」と準備しているのかもしれない。

軍行政の暴走か、政治側の策略か、または偶然か、安倍政権発足後は「成熟国」とは言い難い動きも見て取れる。「731」と記された自衛隊航空機のコクピットからポーズを披露する首相就任直後の安倍氏。過去の中国を攻撃した軍艦、その名を取った戦後最大の自衛艦いずも。外国人を含む労働者に半強制的な労働を課したとする炭鉱の島、いわゆる軍艦島を美化する動き。副首相麻生氏のナチス発言等...

昨年以降、日本国民は長年、国を支配して来た保守派勢力を再び政権に据え、元の鞘に収まった。これが意味するものは成熟国への前進か、あるいはその逆か。東京オリンピック開催前後には、その答えが出ているだろうか。