2009年6月22日

消えゆくドル基軸通貨体制

現米国政府が「ドル基軸通貨体制」の維持を重要課題としているだろうか。短期的に見れば、急激な政策変化による国力(経済力)低下を避けるため、現在の体制維持を推進するかもしれない。しかしながら中長期的には、一国大国主義につながる現在の通貨体制は、そう長続きするものでないことを、現米国政府は深く理解している。

今後も新興国が経済的に豊かになり、世界全体で数十億にもおよぶ民が資本主義経済を学び理解を深めていく。そして近い将来、経済力で米国を抜く国や経済共同体が複数出てくることになる。

いずれEUも幾多の試練を経て本格機能し始め、アジア諸国、アフリカ、南米を含め、ついに全世界資本主義化が本格始動する前夜まで来ている。

今回の金融危機はまさにそれに向けた“初期障害”を取り除くようなもので、米国が大国主義を取っていても、それは自らを弱体化させるに過ぎない。逆に一国大国主義こそが、これまでのグローバル経済に潜む最大の弱点であり、今回の金融危機はこれが機能しなかったことの現れであると、現米国政府は深く理解しているのではないか。

かつて閉鎖的であった東欧、ロシア、中国の共産党が、市場経済を横目で見て来た時代はとうに過ぎ去った。米イラク間も、日米のような蜜月関係にならないことは既に明らかだ。仮に、米国がこれらの国々の取込みに成功し、これらの国で親米度が増すと、米国債の保有が膨らむことにつなながる。債権者と債務者の関係が始まり、それが米国の「弱み」へと変わることも否定できない。日本と異なり、自国に通常の軍隊を持つ国々は、ある意味、米国と対等に接することができるわけで、国家の弱みを握られている状態では政策に行き詰まりが生じかねない。よって米国が他国を取り込もうとする政策は、長期的には不安定さをもたらすことにもつながる。

橋本氏が総理大臣であった当時、「米国債を売ろうか」などと言う言葉をきっかけにドルが暴落したのは誰もが知るところである。いざとなればロシアやブラジル、場合によっては中国も債権者の立場を最大限利用する。長期的には米国が基軸通貨体制を維持することにより得られるリターンより、抱えるリスクのほうが遥かに大きいと言える。米国にとって日米間のような関係は、一度しかない奇跡なのだ。

このような危険をはらむドル基軸通貨体制を、100年に一度と言われる改革の時に、100年先を見据える改革の中で、自国の最大の弱点を基礎とする現在の通貨体制に、現在の政権が固執しているとは大変考え難い。しかしそこは2大政党制。いつ国内のパワーバランスが180度ひっくり返るとも限らない。ドル基軸体制の行方はそこにある。
 

― 自己の他ブログサイトより転記 ―