2013年11月20日

アメリカの「権力闘争」を反映する日中・日韓関係

■メディア論調の変化

ここ数日、日本のメディアは「親日」とも取れる内容の韓国大手紙の記事や、識者へのインタビューを報じている。朴政権の対日外交を批判し、「日本との関係改善を」とする内容である。日本のメディアは「意図的」とも思えるほど、長い間、韓国における親日の様子を日本国内で報じてこなかった。米国からの信任を取り付けたいためか、ここへ来て韓国との関係修復へ向けた変化が伺える。

これに先立ち、安倍政権が進めてきた「集団的自衛権」を可能にする憲法解釈の見直し、その先送りが決定されている。これは秘密保護法と並び、安倍政権、肝いりの政策である。しかし安倍政治の本丸と見られていた「改憲」も既にトーンダウンするなど、これら「断念」とも見られる足踏みの背景には、米国からの圧力があると見られている。本来、軍事同盟の強化は、米軍行政にとって好ましい政策であるにもかかわらず、そこに反対の力が働く理由には、米国政府による中国への配慮、または中国からの圧力があるとの見方が出ている。

2013年9月27日

安倍政権、「女性重視」で税収増プロモーション

■プロモーション利用

国連総会で女性重視の姿勢を示した安倍氏。何か唐突感が残る。昨年の政権交代以降、氏は自らの改憲イデオロギー傍ら「経済重視」で今日まできている。しかし国民が支持する経済面においても、実際の回復と呼ぶには程遠いながら、世界の表舞台では女性の人権について訴え始めている。その真意は。

橋下氏の慰安婦発言で広がった日本の負のイメージを振り払いたいのは当然である。しかし全体主義を骨格とする自民改憲案を見ても理解できる通り、本質は「主婦も働き税を収めよ、国家に努めよ」ではないか。海外からは「ただの掛け声、その場しのぎ」と、日本社会における女性の権利に疑念の声が上がる(下記URL)。

■レーガノミクス、先富論、アベノミクス

アベノミクスは30年前の二つの国の政策をモデルしている。一つはその名の通り米国レーガノミクス、もう一つは中国鄧小平の先富論。これらの政策の軸となっているのがトリクルダウン理論。17世紀から18世紀にかけ、オランダ出身のマンデビル提唱の理論がその原点とされる。日本は江戸真っ盛りの時代。

トリクルダウンは英語の「流れ出る・垂れ落ちる」。富裕層からこぼれ落ちる金が、市場経済に浸透する様子を仮想している。レーガノミクスはこの「仮説」を忠実に政策実行したとされる。先富論も「富める者から先に富み弱者を救済せよ」と共産国的な主張も含むが、基本は「富裕層からこぼれ落ちる富」を狙っている。

今日の日本のデフレに対し、当時の米国ではスタグフレーションが深刻さを増していた。諸説多数も、一般的にはレーガノミクス以前から、FRBが取り始めた政策が当時の米国経済を救ったとされている。もう一つのトリクルダウン思想からなるサッチャリズム同様、レーガノミクスには今も批判的な意見が多い。

■アベノミクス、大企業と富裕層を支援

米国レーガノミクスでは全納税者を対象に幅広く所得減税が行われた。それまで約70%徴収されていた富裕層の所得税を、最終的には30%程度にまで落とすも、同時に低所得層への減税も実施している。

日本のアベノミクスでは、大企業や富裕層への支援、減税に留まる。他国のように、国民番号等で不正蓄財を監視する事もない。企業や富裕層の元気を取り戻すことで、そこから「こぼれ落ちる富」が日本経済を潤すのだという。

そしてここでの税収減を補うのが「課税対象の拡大」。決して「軽視」されているわけではない女性の権利を敢えて取り上げ、主婦への労働参加を促す。「大黒柱が一家を養う」型の世帯が持つ大きな税扶養控除を削減し、そこに課税し、さらに国保・年金保険料を徴収する対象を増やしたいと言うのが、安倍政権が掲げる「女性重視」の本質ではないか。




2013年9月21日

成熟国を目指す日本、憲法曲解で改憲断念か

「憲法曲解」というリスクを取ってまで、集団的自衛権を手にしたい日本政府の思惑は二つ。1.米軍支援を打ち出すことで同盟関係を強化し、東アジアにおける日本のプレゼンスを高めること。2.米国との蜜月な関係を維持し、同国が世界に持つ権益に今後ともあやかり続けること。これらは安倍氏が目指す、日本の軍事産業育成にも大いに貢献する。

しかしこの2点は表向きのストーリー。深読みすれば、国内向けには集団的自衛権獲得による「国益」を訴え、「軍行政」サイドの要求を満たす一方、裏では改憲を断念し、中韓、世界への配慮とする判断だろうか。もちろん、それこそが「政治」というものである。

景気回復途上の今は「とりあえず仲良く」であり、五輪も踏まえ「日本は平和の国」を世界にアピールする必要がある。「初回」の東京五輪時のように、世界を敵に回し、また「自ら辞退」などということは許されない。何よりも、改憲を先送りすることで今後とも「なんなら改憲するぞ」は、東アジアにおける日本の強力なカードであり続ける。

逆に中韓トップレベルでは、日本にこのカードを持たせまいと考えているだろうか。中韓にとって日本の「軍拡改憲」は、世界を味方につける大きなチャンスとなる。自国の軍拡へ向けた動きが理解され、対日本警戒行動に正当性を与えることができる。中韓は日本の軍拡改憲を表では非難しつつも、裏では「その気ならどうぞ」と準備しているのかもしれない。

軍行政の暴走か、政治側の策略か、または偶然か、安倍政権発足後は「成熟国」とは言い難い動きも見て取れる。「731」と記された自衛隊航空機のコクピットからポーズを披露する首相就任直後の安倍氏。過去の中国を攻撃した軍艦、その名を取った戦後最大の自衛艦いずも。外国人を含む労働者に半強制的な労働を課したとする炭鉱の島、いわゆる軍艦島を美化する動き。副首相麻生氏のナチス発言等...

昨年以降、日本国民は長年、国を支配して来た保守派勢力を再び政権に据え、元の鞘に収まった。これが意味するものは成熟国への前進か、あるいはその逆か。東京オリンピック開催前後には、その答えが出ているだろうか。


2013年7月31日

「米中対立」という発想に失う世界観

■低レベル、時代錯誤、勘違い

「米中対立」を演出する日本政府とメディア。両国の「覇権争い」を強調する論調が続く。しかし現在の米中はどちらも「世界制覇」など求めていない。頭の片隅にすらないのではないか。

既に過去、覇権主義にはコストがかかった上、世界だけでなく自国民にすら支持されることはなかった。米ソはしたくもない戦争で軍事力を誇示し合い、結果みな傷ついた苦い歴史がある。

2013年7月21日

加工貿易・通商立国のジレンマ

■「日米ショック」のインパクト

中国が「日米国債を売却」、とほのめかすだけでサブプライム危機を上回る混乱が起こり得る。

日本の橋本元首相が、「米国債売却への誘惑」を語っただけでドルが急落した。日米関係を考えればそんなことは有り得なかったにもかかわらずである。当時これは、米国への脅威と取られ、氏は翌年退陣に追いやれている。

日本政府、マスコミは好んで「中国ショック」というフレーズを使う。日本では「ウケ」がいいらしい。しかしこのように掻き立てれば、「危機対応の為」と、中国政府が日米債売却をほのめかすことに正当性を与える。実際に売却するかどうかは別として、世界から批判を受けることなくこの「カード」をチラつかせることができる。これは外交上の大きな優位性となる。そのお膳立てをわざわざ日本側で行う必要もない。

日米債売りが実際に言われ始めれば、市場は大混乱に陥りかねない。投資家は同国債を売り急ぎ、ヘッジファンドは空売り攻勢をかける。金利が急騰して通貨も売られ、ハイパーインフレに陥りかねない。世界最大級の米国債権者である日本は、実際に自国債が売られなくとも、中国が米国債の売却をほのめかすだけでこれは起こる。

■中国による「世界買い」加速

「日米型の資本主義」において、各業界の影響力は強力である。多くの場合、その影響力が国家の方向性を決定付けていると言っても過言ではない。しかし中国の場合、極論を言えば政府の方針一つで、業界の在り方に変化を起こすこともできる。日米債ショックと時を同じくして、世界の投資家の注目を集める経済政策が中国政府から発せられれば、世界のマネーは一気に同国へと向かう。人民元は急騰し、強い元を利用した中国による「世界買い」が加速する。

過去に世界から模倣国家と見下されながらも、地味道に技術を習得し、その改良・改善によって成果を上げてきた日本とは対照的に、通商・商業国としての基盤を持つ中国は、世界最大かつ長い歴史の商業ネットワークを有す。華僑として知られるこの商業基盤を通じ、中華圏はもとより、現在では世界市場の隅々にまでその資本を浸透させている。金融時代はまさに「資本ビジネス」の時代。中国はこれを最大限利用している。

現時点で、中国による「日米債外交」の脅威を言う人はあまり多くないと思う。しかし日本政府・マスコミが、中国への対抗心を抑え切れず、ナショナリズムに駆られる極右勢力を放置し続ければ、中国はどこかの時点で日本との関係に見切りを付けざるを得なくなる。すなわち「日米債ショック」の脅威が増すことになる。

わずか半年で30%の価値を落とした自国通貨「円」を、政府・マスコミは未だ「安全資産」と訴えている。この表現に異を唱える者すらいない日本社会においては、「日米債ショック」への準備はほぼ皆無と言える。

■「島国根性」による隣国関係軽視

下の記事内に「和則両利・闘則両害」と言う言葉が出てくる。英・EU間関係を見ても同様、「島国」にはこれを基礎理念とする隣国政策が未だ根付いていない。

過去において、市民レベルの交流もなく、交通機関も発達していない時代はそれでも良かった。でも今の日本が、しかも周辺国より先進の立場にありながら、口では言いながらも未だ「和則両利」の基礎理念を持たないことは大問題である。そのことは人種差別を禁止する法律さえ不整備の「遅れ・異質さ」にも表れている。

日本は自他共に認める加工貿易・通商立国。その起源は清国との貿易に始まる。アジア最貧国と言われた当時の日本が、最初に手にした富は清国との貿易による。世界の通商が清国を中心に営まれた時代、その上海港の一角で、日本は国際デビューを果たした。その後の近代化、現在の日本経済の発展につながる原点である。

戦後、日本は朝鮮戦争で膨大な外貨を稼ぎ、後の冷戦にも支えられ、欧米に寄り添う形で急成長を果たす。この間、「日本製=安物コピー商品」というレッテルを貼られるも、そのような観念がなくなっていった背景には、旺盛な需要を提供した80年代後半以降の中国との交易がある。

欧米では安物扱いされた日本製品を、中国は好んで買ってくれた。欧米市場では売れなかった日本製の日用品を、中国は大量に買ってくれた。さらにバブル経済崩壊後の日本経済が「底抜け」を防げたのも、やはり中国に支えられた部分が非常に大きい。日本政府やメディアによる強気報道とは裏腹に、韓国、台湾はもとより、欧米企業等、中国市場でシェアを広げたがっている企業は無数に存在する。日本が中国市場を去ったところで、同国で何かが大きく変わるものでもない。

日本は自らの「生い立ち」を遠避けるあまり、「和則両利・闘則両害」と言う重要な理念を持つ事が出来ないでいる。このような体制が今の日本社会、日本国民から「安らぎ」を奪っている。今後とも「加工貿易・通商国」としての道を選択するのであれば、「和則両利・闘則両害」は島国の日本にとっても欠かせない理念となる。周辺国との対立を深めながらの「通商ビジネス」には、自ずと限界が訪れるものである。


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http://ewha2010.blogspot.com/2012/06/blog-post.html

2013年4月14日

外から見える改憲日本の真の姿

■米・JIBs軍産複合体

国家間で武器、戦費を融通し合う軍産複合国連携。メンバー国は直接、間接を問わず参戦。武器製造による経済効果は元より、後の影響力、利権拡大を目指す。

JIBsとも呼ばれ始めている日・英・似の米国を介した連携。世界最強の軍産複合体である。始まりは、戦後のサンフランシスコ講和条約。共産主義を徹底否定し、中露を排した一部戦勝国限定の和平協定である。本来、全てを失うはずの敗戦国日本が、これにより朝鮮戦争を支援、物資供給で大きく稼いだ。戦後日本経済復興の礎となるいわゆる朝鮮特需である。その後も一貫して米国の戦争を支持、支援してきた日本。米国の影響力を活用し、アジアを始め、世界各地で利権獲得を果たしている。これが戦後日本の政治、経済、社会、文化の骨格となっている。

2013年1月7日

メディアの右傾化が招いた民主党の大敗

■ナショナリズムの高揚に揺れた民主党

今に始まったわけではない領土問題。しかし昨年、この領土問題で日本は揺れ、国家全体が瞬時にナショナリズムに沸いた。メディア各社は金型を押したように右寄り一色となった。政治・メディアがそれを掻き立てるといういささか先進国らしからぬ偏りを浮かび上がらせた。

民主党が右に寄っているという「誤った印象」を払拭する報道もないまま、右傾化したメディア報道はまるで左派が消滅したかのようであった。こんな中、衆院選へと突入、自信を失っていた民主党はメディア、国民の右傾化した視線を意識せざる得なくなり、隣国や世界に対し態度を硬化させた。