2016年1月24日

「世界10大リスク 2016」 by イアン・ブレマー ユーラシア・グループ ①


1.空洞化する同盟関係(同盟の空洞化)

大西洋をまたぐ同盟は、70年近く世界で最も重要な関係にあった。

しかし、過去のどの時点と比較しても、現在の同盟関係は弱体化し現実性を失っている。欧州にとってこの同盟は最優先事項でなくなり、既に決定的な役割を持たなくなっている。

ロシアのウクライナへの介入と、シリアでの衝突が、米欧同盟の亀裂を表面化させることになる。米欧はそれぞれが別の道を歩むことになり、「世界の消防士」はその役目を終わらせる。特に中東問題では利害が一致しないこともあり、今年、同地域での紛争に解決は見られない。


2.欧州の閉鎖性(閉じられた欧州)

2016年は欧州で亀裂が限界点に達し、「開かれたヨーロッパ」と「内向きなヨーロッパ」とで核心的なズレが勃興する。格差、難民、テロ、草の根活動による政治圧力が折り重なり、「一つのヨーロッパ」の原理原則は、前例のない挑戦を突き付けられる。

欧州各国のオープンな国境は一定の圧力にさらされる。ブレグジット、すなわちイギリスのEU離脱リスクも軽視され過ぎている。2016年の欧州経済は団結を示しながらも、その広義における本質、社会構造面において真の団結は見られない。


3.中国の足跡(存在感)

中国の経済的、政治的発展は未だ穏当なレベルにあるが、この段階で、世界中にこれほど強力な存在感を持つ国は未だかつてない。今日、中国はそのスケールで世界経済戦略を有す唯一の国である。

2016年、中国が最重要国であると同時に、最も不確でもある世界の原動力という認識が、中国を受け入れる準備ができずに躊躇し、中国の戦略に同意できず、どう対処すべきか分からないでいる世界の他のプレーヤーに、これまで以上の動揺を与えることになる。


4.ISISとその「仲間たち」(友邦)

ISISは世界で最も強力なテロリスト組織である。妥当性に欠け、方向性を見誤り、一貫性のない目標を掲げる組織でありながら、それに追随、模倣するナイジェリア、フィリピン、そして世界の同調者達を魅了している。

2016年、この問題は解決不可能であることが決定的となり、ISIS及びその他のテロ組織はこれを逆手に取ることになる。

最も攻撃を受けやすい国々(フランス、ロシア、トルコ、サウジアラビア、米国)は、明確な理由とともにISISのターゲットであり続ける。また各国(イラク、レバノン、ヨルダン、エジプトおよび、ヨーロッパ各地)に広がるイスラム最大のスンニ派も同じく。


5.サウジアラビア

サウジ王国は今年、王室内で高まりつつあるリスク、揺れ動く不和に直面する。また、彼らは孤立状態を深め、それが中東全域において、彼らをより強硬な行動へとかき立てる。

王室内の衝突とういう脅威が表面化し、20151月のサルマン王即位以前には想像だになかった「表立った対立」というシナリオが、今、完全なる現実となっている。

また同国の対外的な主な懸念は、ここから直ぐにも制裁が解かれるイランである。