2016年1月24日

「世界10大リスク 2016」 by イアン・ブレマー ユーラシア・グループ ②


6.テクノロジストの台頭

強い影響力を有す各テクノロジー界出身のグローバルな人材が、前例のない主張をもって政治の領域へと入る。

この新たに登場した野心的なメンバーは多種多様であり、そのキャリアはシリコンバレーからハッカー集団、テクノロジー好きの引退者にまで広がる。

政治的な台頭を見せるこれらのテクノロジストは、政府、市民からの抵抗を生み、それが政策や市場にボラティリティを呼び込むことになる。

 
7.予期せぬ行動の指導者達(予測不可能なリーダー達)

予期せぬ行動で知られる数々の指導者らが、国際政治の場に不安要素を持ち込む。

ロシアのウラジミール・プーチン、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子、そして小国ではあるが、より重要なウクライナのペトロ・ポロシェンコ。

2016年のリストに、これらの予期せぬ行動を取る指導者達が上がるのは、彼らの介入、干渉が相互に入り混じって対立しているからである。

大きな影響力を持つ一人の「予期せぬ指導者」の発言が、国際的には大きな意味合いを持つ。


8.ブラジル

ジルマ・ルセフ大統領の政治生命は崖っぷちにあり、2016年、同国の政治的、経済的危機は高まる一方である。

評論家や市場関係者の願いとは裏腹に、ルセフ弾劾を巡る争いにおいても、現在の政治的閉塞感を取り除けそうにない。

果たして大統領は職に留まるべきか。同政府は膨れ上がる財政赤字削減に必要な経済再編成への支持は得られない。

もしルセフが失脚し、ミシェルテメル副大統領陣営が政権を取って代わっても、状況はさほど変わらない。


9.十分でない選挙(選挙の少なさ)少なすぎる選挙

新興国市場は、2014~2015年に国政選挙を終えた。しかし今年は、新興国有権者の声を政権に伝える機会が比較的少ない。

成長が鈍化し、人々の生活水準が上向かないことへの不満が表面化し、国の統治と安定に苦慮が見られる。

歴史的には、選挙のない年の市場は穏やかであるが、今回は様子が異なる。

過去10年間、期待とともにほとんどの新興国市場は莫大な所得増を謳歌した。しかし現実に目覚める時が訪れている。


10.トルコ

2015年末、公正発展党が最終的な勝利を収め、エルドガン大統領は今、議院内閣制から大統領制への制度変更を推している。

氏の2016年の目標は達成できそうにないが、強力な選挙運動が既に劣化が進んんでいるトルコのビジネス、投資環境へさらなるダメージを与えることになる。

安全保障の最前線では、クルディスタン労働者党による暴力を終わらせることが喫緊の課題であるが、その目途は一向に立っていない。

またトルコは、ISISの新たなる攻撃対象としてより攻撃を受けやすくなると同時に、イスラム国を抑え込むよう絶え間ない圧力が米国からアンカラにかかけられる。しかしそれへの目立った成果は得らない。


真実はここに

アメリカの有権者は、イスラム社会に対し米国を閉ざそうとする大統領を選出しない。

中国経済はハードランディングに向かっていない。また政治面においても安定を維持する。

強い指導力をもつ日本の安倍晋三、インドのナレンドラ・モディ、そして特に中国の習近平は、アジアの地政学的な衝突リスクを低下させ、経済再生と長期戦略を掲げ、アジアの3人のキーパーソンとしてその地位を維持する。