2011年8月30日

逆ニクソンショック― 米国の侮れない危機管理行動 3/4

米国が危機に陥った際、取り得る行動として「逆ニクソンショック」というものを私は考えています。すなわちある日突然、米国が「米ドルと金の交換を再開する」ということです。

私の計算の範囲では、米国が所有する金の価値は、ドル換算で現在のマネタリーベースを遥かに上回っています。つまり米国は金本位制を再開してドルを回収、ドルの信認を高めるに十分な金を持っていると見ています。

ニクソン政権下の管理通貨制への移行の年、1971年末の金価格は41ドル台で推移していますので、現在1,800ドル台であることを考えれば、これでレートを固定した場合、単純に40分の1以下のコストでドルを回収できることになります。

本来、ニクソンショックによって金を大量に保有する義務が解かれれば、米国の金の保有量は減少していてもおかしくありません。しかしその後も米国の金保有量は増え続け、現在もダントツの世界一位を維持しています。よって現在の金価格の高騰とニクソンショックは無関係でないと見ることもできます。

米国の管理通貨制移行当時、以下のような想定があったと考えます。
1.     インフレ、冷戦、世界情勢不安で金の価値は上昇し続ける。

2.     将来的に米国の大国としての影響力が下がり始め、ドルの信認が薄れれば、金価格はさらに高騰する。

3.     米ドルが危機に陥った際には、逆ニクソンショックを起こすことで、低コストでドルが回収できる。

4.     ある程度ドルを回収した後に、再び管理通貨制へ戻すことも可能である。その際に信認は得られないかもしれない。がしかし国家衰退を避ける為にはいかなる手段をも取る、など。