2010年9月5日

「日本株式会社」とその体制維持 国民生活にどうプラスに働くのか、政府は科学的論拠を述べよ

いつも円高になると、慌ててバンドエードを貼るような政策論が出てくる。

「円高は国家を衰退させる」といった論調が、円高になる度に政府やメディアから噴出する。日本国の自立を本気で考えたとき、「円高」は本当に悪と言えるだろうか。日本は「円安」に依存する経済モデルからの脱却を議論すべきである。

円安依存の背景は、輸出企業に依存した経済構造にあり、これは高度成長期型、外需依存型経済である。成長シナリオは「客(外国)」次第。米国や中国、欧州等、外国の発展が自国の成長シナリオの基盤なのである。日本はこれで良いのだろうか。

ビジネス経験を持つ者であれば、誰でも「客次第の経営」など本来したくないものだ。生きるも死ぬも客の消費動向次第のビジネスと言うことであれば、経営者に優れた能力は必要ない。一国の経済がこのような状態では、機動的成長戦略を持つ他国が魅力的に見えて当然である。

日本の自国通貨安政策についてまず思うことは、政・管・メディアと親交の深い輸出企業を「優遇」することが目的化されてはいないだろうか。円高になる度に「円高悪論」、「輸出企業擁護論」が政府、メディアから反射的に起こる。まるで円高でGDPに貢献する企業や個人事業主など存在しないかのようである。

輸出企業は政府、メディアが保護してくれることをいいことに、目先の帳尻だけを持ち出し、「仕入れコスト」の低減にはあまり触れようとしない。彼らが「輸入」に頼っている原材料費は現在超ディスカントとなっており、現物、先物取引を問わず既に息を呑んで買いあさっているはずである。さらに海外企業の買収(または部門買収)等、円安時には非常に困難であるが、円高時には比較的容易である。これは企業を将来大きな成長へ導く可能性を持つ多大な恩恵である。自国通貨高は、“成熟”し人口減少を迎える国家にとっては本来もっとポジティブにとらえられるべきである。

こうしたことなどを詳細に分析することなく、多額の国費を安易に米国債に振り向ける行為は、輸出企業に「補助金」を与えるのとほぼ同意義である。多額の国費を担保にした円売り外国通貨買いが、日本国の発展にどう寄与するのか、政府、メディアは科学的な論拠を示したうえで政策を論ずるべきだ。輸出産業を優遇する傍ら、個人事業主がリスクと取って稼ぎ、税をおさめた後に蓄えた資産価値を、為替操作によって安易に目減りさせるべきでない。するのであればそれを正当化するだけの科学的根拠を国民に示すべきである。

また「為替介入」と言えば聞こえはいいかもしれないが、これは立派な「市場操作」であり、結局は米国債を買い支える行為である。日本国政府は国費を使用して、米国の長期金利低下を後押しているわけだ。他国債を買い支える以前に、自国債を買い支えではどうだろうか。

別の見方をすれば、日本の為替介入は「外為投資」であり、「外国債投資」である。当然、為替変動により損益が発生するわけで、政府が輸出企業の業績保護を目的として、国費をリスクにさらすことにつながる。

現にこれまで数十兆単位で損失が発生しているとのことであるので、その予算で内需喚起する政策が取れていたのなら、もともと介入が必要となる事態に陥らなかったかもしれない。

今後とも米国債の購入を行うのであれば、事前に現在ある損失と、後に発生し得るリスクや損失について公表し、何らかの対処をも用意した上で介入すべきである。自国債を買い支える以前に米国債を買い支えることが、日本国の発展に有益とするのなら、その科学的論拠を事前に示すべきである。

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