2011年9月23日

二番底か、それとも大底か

昨日のNYダウは400ドル近く下落して引けました。過去のメールで「ダウは11,700ドル付近まで自律反発し、その水準に25日線が差し掛かる頃、また下値を探る展開になると考えています」と書きました。多くのアナリストも同様に考えていたことでしょう。実際に直近の戻り高値は11,716ドルとなり、25日線を一時は上抜けたもののその後は下落基調で、下値模索の様相を呈していると言えます。

気を付けなくてはならないのは、「PBR1倍割れは割安」や「ここからの下値は限定的」といったアナリストの言葉です。また格付エイジェントの目標株価なるものにも十分気を付けてください。個人的には自然エネルギーやスマートフォン関係などの、テーマ株なども今は警戒すべきであると考えています。

アナリストらのこれらの言葉には大前提があり、「ギリシャのデフォルトはなく、ましてやそれがポルトガル、スペイン等に波及することもなしに、中国もまたこのまま成長を続ければ」ということになります。実際にユーロ安は進行し、上海も年初来安値を更新しています。

私は大方、「2008年の金融危機はまだ終わっていない」と主張するアナリストの意見を支持しています。彼らがいうように、2008年に不良債権化したサブプライムモーゲッジの後処理は何ら進んでいないのが現状です。これらに深く関わった銀行らのツケを各国政府が尻ぬぐいしているに過ぎず、ソブリンリスクは上昇傾向にあります。

921日のFOMCは市場を満足させるものではありませんでした。先日発表された米国の景気対策が議会を通れば、確かに株価底割れを防ぐ下支えにはなりますが、それも一次的な下支えにしかならないと考えています。このまま米国景気後退懸念やEU問題で改善が見られなければ、いずれ世界の金融市場は、米国住宅バブル崩壊の二番底もしくは大底を付けに行く可能性が高まります。但し本当の大底には日本の債務問題も加わり、もう少し先のことになるはずです。

直近、このまま安値を割り込む相場が訪れれば、それはファンダメンタルズ度外視の急落となるでしょう。個別的には考えられないレベルへ下押しする銘柄も出てくるはずです。逆に米国やEU当局の思い切った政策もなしに株価が上昇する局面が来れば(投機筋の買戻しがあれば)、利益確定、損切りを問わずポジションを半減させ、キャッシュポジションを増やすべきであると考えています。

最後に、今は株式投資はタイミングで行うものであると考えています。そして株価とはその水準があってないようなものです。「金」のように現物、埋蔵量によって裏付けられているものとは大きく異なります。「レバレッジを効かせたリスクマネー(架空のマネー)」の流出入で株価は大きく左右され、買われ過ぎ、売られ過ぎ(オーバーシュート)が起こるものです。

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2011年9月15日

EUの試練

<統一か、統合か>  

EUの未来は決まっている。それは現在より強固な、そしてより進化したunificationである。金融、財政の統合は通過点となり、その後「ヨーロッパ」としてどう進化していくのかがまだ見えていない。今はそれに揺れているのである。

明治維新の日本でも、通貨や財政だけでなく言葉や習慣が異なる国々(藩)を一つにまとめ上げた。清国の惨劇を目の当たりにしていた幕府、藩らは、体制を変えずしては列島を守れない情勢にあることを理解し、幾多の試練を経て統一を成し遂げた。そこでは我より国家という「森」を想う精神が、最終的に統一を可能にしたのだと思う。

しかし現代に至っては、つい数年前まで政界や言論界では「日本は一民族、一言語」と主張するなど、少数民族の尊厳が傷つけられてきた。憲法で守られるはずの基本的人権が歪んだ状態で統一に至っている。

私個人としては、今も米軍駐留に苦しむ沖縄、その美しい海や土地がとてももったいない気がしてならない。明治維新によって日本に主権を奪われ、結果的にではあるが琉球王国の民はその尊厳を失っただけでなく、美しい海や温暖な気候を活かした王国発展の機会を奪われた。夢物語として仮に今も琉球王国が存続していたのなら、米軍駐留などは当然なく、アジアの中心に位置する行商の拠点、資源国、一大リゾート国家になっていたに違いない。これができない現状はやはり「トップの影響力は計り知れない」という部分でもある。

中国では多民族、多文化を維持する形で国家が形成された。しかし他国による武力侵略を受ける心配がほとんどなくなった現代においては、資源を抱えるチベットやウルムチのように独立を主張する地域を抱えながらの統合となっている。日本が「統一国家」なのに対し、中国は「統合国家」であると言える。

<ユーロ崩壊を否定>  

欧州が将来的に「一国」という形に近付くとすれば、やはり統一型ではなく、統合型になるのであろう。もちろん現在のEUでは、過去の中国のように皇帝や将軍が軍事力で多民族をまとめ上げようとする必要もなければ、日本や過去のドイツのように民族一元化を目指す必要もない。成熟した民主国とその市民らが和平を望み、言ってみれば自主的に譲り合いの精神を持って和平を保とうとしているのである。よって地域内で二度と武力衝突などを起こさないための手段として、可能なまでの統合を試みればよいのである。日本ではEUの発足について、「米国や日本の経済力に対抗するため、経済規模が比較的小さな欧州諸国が力を合わせることになった」などと捉えられがちであるが、それは誤解である。

現在の危機を乗り越えるため、今とは形を変えた通貨ユーロの在り方はあっていいと思うが、EUの設立意義を想えば、日本の経済評論家などがメディアの前で軽々しく口にする「ユーロ崩壊」などということはまずないであろうと私は思っている。ましてや一加盟国の破綻が、ユーロ崩壊、ひいてはEU崩壊を意味するなどという論調は行き過ぎである。

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2011年9月4日

世界の進化の中で退化する日本 2

世界一高価な通信水道光熱費に、多くの国民が苦しめられている日本。家計を支える為に高校を中退して働く十代が急増する一方で、未だ世界一高品質の道路を作り続ける国家構造にあります。

その一部、日本の電力事業のあり方について、震災を経てようやくメディアがわずかに取り上げるに至りました。数社だけで送電事業を独占し、新規参入を排除する力が今も強く働いています。

日本はほんの数年前まで、人が生きるに必要不可欠な塩を「専売」していた国家。しかも完全自由化されたのは21世紀に入ってからのこと。産業の根幹となる生産、流通、販売の全てを国とそこに関わるメンバーで独占し、その商機を長年国民から奪い続けました。同様のことがエネルギー分野などにおいても行われています。

他の先進諸国民が持っている権利や機会が日本国民には与えられておらず、その一方で、国と関わりの深い限られたメンバーだけが今も潤い続けています。このような国家構造は、国民への現代教育が十分でない途上国や、発展後にも利権が保護されている新興国においてよくみられる構造であると言えるでしょう。

いずれ世界シェアを落とすことが明白な電化製品、自動車産業等にいつまでも依存することなく、エネルギー市場を始めとするモノポリー市場を先進国並みに開放し、経済の活力を取り戻す努力を国は惜しむべきではありません。


2011年9月3日

世界の進化の中で退化する日本 1

毎年恒例となってしまった皇居での内閣認証式。それに付き合う天皇陛下はどのようなお気持ちでいるのでしょうか。

世界では問題を抱えながらも政治は適当に進化し、技術の進歩や経済成長によって未来への時の流れを感じます。日本では家電、エレクトロニクス、自動車産業などの市場では小規模な発展が見られますが、それも新興国時代の日本企業が欧米企業の地位を脅かし始めたのと同様に、この先、世界市場における日本企業の地位低下を食い止めることはできないでしょう。

問題はその先に存在すべき産業と市場が日本にはないか、あっても新産業として成立っていないということです。自然エネルギー、宇宙開発、軍事、航空機などの重工業分野において、開かれたフェアな市場がほとんどないのが実情です。

91日、フランスでは「潮流発電所」の建設現場で、心臓部となるタービンが海底に設置されと報道されています。建設中の潮力発電所は既存のものより規模が大きく、来年の完成時には世界最大の潮力発電量を誇るとのことです。

韓国もまた、数日前に新たな潮力発電所が電力供給を開始しました。この潮力発電所と同国既存の潮力発電所、現在建設中のものを合わせると、フランスを抜き、世界最大の潮力発電量を誇るとのことです。

デンマーク、オランダの風力発電所、ドイツの太陽光、バイオマス発電所、ニュージランドの地熱発電所等、世界では各国の技術を結集して(日本企業の技術も含む)代替エネルギー発電所建設が盛んに進められています。

現代人の生活にとって、食料の次に大切なエネルギー。日本は未だ火力、原子力といった古いタイプの発電所で占められています。また全体に占める割合はわずかでしかない水力発電すら、コンクリートダムが完成してもなお、永遠に税を吸収する構造にあります。そしてこれらの水力発電所は、日本の美しい自然(山、川、海岸)を破壊し続けるといった重大な短所を未だ克服できずにいるのです。

msn産経ニュース: 進まぬ電力新規参入