2010年10月26日

日本人は本当に米国に何も言えないのか


今回のG20の際に「米国の流動性拡大策は為替操作に当たる」との批判が出たらしい。

米国政府は「強いドルを支持する」と発言したり、「これ以上のドル安は望まない」などと言いつつも、流動性の拡大には躍起だ。間接的ではあるが、報道の通りこれは為替操作に値する。

過去に、中国による尖閣諸島でのガス田開発のことで、中国政府は日本と共同開発すると、口頭ではあるが約束しながらも、結局はその裏で単独開発を続けていた。これに対し日本国内では、政府、国民、メディアなど、国家総出で中国の対応を非難した。中国の行動は、「片手で握手しながら、もう片方の手で殴りかかるようなものだ」としきりに伝えられた。

現在の米国はどうだろう。「強いドルを」などと言う一方で、流動性拡大政策(紙幣増刷=価値の希薄化策)を取っている。さらには他国を為替操作国に認定しようとしている。現在のドル安が日本経済に甚大な被害を与えていると政府やメディアが本当に信じるのなら(私は信じていないが)、こうした米国政府のドル安政策を大いに非難すべきであろう。

ガス田開発問題で中国が行っていることは、危機的状況にある現在の日本経済へ何ら実質的なダメージを与えるものではない。自国の石油会社などに開発許可を求められながらも、それをないがしろにして来た日本政府・国民にとっては、もともと手中にしていないものが第三者に奪われる可能性があるだけだ。当然それはそれで悔しいことではあるが、それによってこれまでの日本経済にダメージを与えるものではない。

対して現在の米国の二枚舌は、日本国政府・メディアが正しいならば、片手で握手しながらもう片方の手で殴りかかられ、日本は「重傷」を負わされていると言わなくてはならない。

日本国政府・国民は、日本経済に直接かつ甚大なダメージを与えているとする米国の政策には極めて寛容である一方、経済的な実被害のない中国のガス田開発に対しては露骨な態度に出る。この差はなんだろうか。まさか白人には何も言えず、アジア人の前ではこれまでの経済力を背景に内弁慶になっているわけではあるまい。