2008年11月18日

今すぐ米国から中国へ

円安で業績を伸ばす企業がある一方で、円高で業績を伸ばす企業がある。この図式には、これまでの失われた10年、15年間、苦しみ耐えている多くの国民、企業が一方にあり、それとは正反対に、政府の円安政策で恩恵を受け、バブル期を凌ぐ過去最高益を更新している「国際優良企業群」がある。

企業数でいえば、バブル期以降、業績を落とした企業が圧倒的大多数でありながら、円安メリット企業はバブル期以降も最高益をあげているという現状がある。これはこの国の経済政策が、公正なバランス感を失っている証しだ。

円安を好む経済政策とは、言わば自国通貨売りを推奨することで、円安メリット企業を育ててきたことになる。しかしながら、そのような政策は、バブル期への突入と同時に、本来去って行かなくてはならなかったものだ。高度成長期型の経済政策である。戦後と変わらない大企業依存型(および政官業もたれ合い型)の経済政策は、日本経済が今も成熟していない証しでもある。

幸か不幸か、日本国民は今も「舶来品」が大好きである。人によりその対象となる国は異なるが、未だ多くの国民、特に女性は、欧米諸国に対する強い憧れがあるようだ。そのような国民性がゆえ、円高による恩恵は経済面だけでなく、精神面においても、日本人を明るい方向へ向かわせる機動力になるはずである。

仮にハイパー円高時代が訪れれば、国民の生活はたちまち華やかになることが考えられる。憧れのヨーロッパ製品や旅行が半額になり、東南アジアに行けばさらに物価は安すく、いつでもより気軽に楽しめるようになる。国政に圧力をかけ、本業での経営努力を惜しむ企業らは苦しめばいい。彼らが苦しむ隙間があれば、それが「ニッチ」となり、零細企業のビジネスチャンスが拡大する。

しかしながら大手企業は苦しむだけではないはずである。現在彼らは円安により、高額な資源・原材料費を支払っている。強い円政策により、材料コストが大幅に下がるのである。繰り返すが、円高による海外での収益減少分は、国内の個人・零細企業にビジネスチャンスとして還元すればいいのだ。それにより国内に「小金持ち」が増え、国内消費が増加し、結果、円安、海外収益に頼らないビジネスモデルができるからである。

さらにトヨタやキャノンなどは、数でものを言う中国人富裕層、今後成長する中間層をメインターゲットにしていくという、方向転換的な発想があってもいいはずである。日本を含め、先進諸国では車を「消費」する余裕などなくなっていく中、こうした方向転換は必要不可欠である。欧米先進国だけが稼ぎどころではない。収益柱が新興国に移る時代が直ぐそこにまで来ている。いや、既にその時代に到達しているかもしれない。