2009年5月29日

日本人のコミュニケーション能力 1

弱点としての日本人の外国語力。これは日本における語学教育の欠陥によるものだろうか。実はより根の深いところに起因するものであるかもしれない。

語学は大きく二つに分けることができる。コミュニケーション力と読解力。もちろんこの両者が揃って始めて優れた語学力と言うが、ツールとしての語学力であれば、必ずしもその両方が必要ではない。

良い例が高度成長期の日本において、工業技術はもとより、経済・経営学、政治、医療など、社会のほとんどの分野において欧米のそれらを勉強し模倣することで、現在の日本社会の基盤を築いた。

専門家と言われた人達の中には、欧米の文書を読みあさり、それを翻訳して自分なりの言葉に変えることで「先生」と呼ばれ人も少なくなかった。また製造企業においては欧米製品を丸ごと入手し、それを分解、研究、模倣、改良することで自社製品を製作した。

このような時代に重宝したのが、欧米製品の説明書、解説書を読み解く能力、すなわち「読解力」である。そう言った意味において戦後の英語教育は正しかったと言える。

時代は変わりバブル期に入ると、日本市場への外資参入規制が緩和方向へ進み、欧米人は日本市場進出のため、また実力を上げた日本企業と取引を行うため、積極的に日本語力を身につけた。

このとき日本人側に求められたのが外国語会話力。それまでの読解力に代わり、英会話力が強く求められ始めた。この変化を教育面で捉えるなら、80年代後半には、コミュニケーションを中心とした外国語教育に切り替わらなくてはならなかったことになる。しかしながら、これだけで日本人の語学力の後れが説明でるわけではない。