2011年5月20日

Spin-Off & Rights Issue ― 制度としての投資家保護を 1

中国アリババが傘下アリペイの所有権を移転したと、12日ロイターなどが報じた。

記事では、大株主である米国ヤフーや日本のソフトバンクなどに対し、「事前の通告がなかった」と米国ヤフーは主張しているとのこと。そのソフトバンクも、自らの株主へは報告をしていない。

ブルームバーグなどは、グループの優良な子会社が分離されたことで、親会社アリババの企業価値低下を引き起こす懸念があるとも報じている(ブルームバーグ記事)。

ビジネスの分離移転が招く企業価値の低下。株主にの代償も支払わずこのようなことをすれば欧米では訴訟の対象となるが、日本では頻繁かつごく当然のこととして行われて来ている。

上場企業は子会社を作り、上場に値する有望なビジネスをその子会社に移転。後にその子会社を上場させ、同子会社の利益を新株主に移転する。それまで懸命に社をサポートしてきた既存株主は、得られるはずであった利益を第三者へ奪われるのである。

企業側は既存株主に対し、グループ規模拡大のメリットや、新ビジネスに対する資金調達の必要性を強調する。しかしながら上場メリット発生のメカニズムや、想定するメリットそのものを具体的な期限と数値をもって株主に説明することない。

当然のことながら、株主に対するこのような説明は非常に複雑な作業を伴うものである。そこでこうした労力を企業が省略できるよう、欧米ではスピンオフなどの制度が存在する。日本市場においてはそのどちらも省略され、既存株主は実質増資、希薄化に伴う株価下落(または上昇力抑制)を強いられている。