2011年11月13日

オリンパスブランドは割安か

<株主責任>  

「オリンパスの技術は買われる、第三者が買収する、破綻はない」という論調がありますが、私はそのような意見を懐疑的に見ています。

仮に報道されている通り、同社が市場、利害関係者を長年騙してきたとうことであれば、どれだけ高い技術を持とうとも、そのような組織が公に存続することはできないはずです。ライブドアや米国エンロン社がそうであったように、企業が市場、社会に与えた大きな影響を考えれば、やはり既存株主の監督責任が問われなければならないでしょう。

わずかな制裁金を東証へ支払うことで、決算書提出の遅延による上場廃止を回避できるようです。しかしながら犯罪行為があったということであれば、当然上場廃止を避けることはできません。焦点は上場維持ではなく、株主責任の範囲が現在5分の1にまで落ちた株価であるのか、またはその責任が破綻にまで及ぶのかということです。

既存の株主が破綻による引責を回避できるものとしては、第三者による買収が考えられます。買主が仮に現在株価の2倍でTOBをかけるとすれば、約2,500億円、前期末の有利子負債残高は単体でも3,600億円以上、売却可能な資産があるにしても今後請求されるであろう株主への賠償に数千億円を認めることとなれば、1兆円クラスの買物ということにもなりかねません。

仮に訴訟が起こらず、高い技術を有する企業が割安と言うことであれば、まさにバフェット氏好みと言えるかもしれません。しかし事業買収を狙っている企業や投資家がどれだけオリンパスブランドを高く評価しようとも、今後長い刑事訴訟を抱え、どれだけの賠償責任が課されるかという不透明性を考えると、今は誰も手が出せないといった状況でしょうか。犯罪組織とその利害関係者を助けることは、その助ける側のブランドを傷つけることにもなりかねません。一連の報道が正しいということであれば、買収はやはり破綻を待ってからということになるのではないでしょうか。

<大幅下落の後にも連日のストップ安>  

買収を狙う投資家らが「破綻待ち」である事は、株価の値動きにも現れています。

1012日から見ますと、この日ゴールドマン・サックスがオリンパスを買い推奨リストに採用、目標株価をそれまでの16倍近くへ一気に引き上げます。翌13日、一時前日比64%高、直近の高値を付けます。14日、ウッドフォードCOO解任のニュースが流れ寄付きから急落、17%以上下げて引けます。

その後過去の買収に対する疑惑が浮上し、オリンパス株は買い戻されながらも下降を続けますが、ウッドフォード氏解任、そして下落開始から約2週間後の27日、一時前日比26%を超える大幅高を演じます。この時点で市場はブランド価値を再評価し、それを織り込み始めたと見ることができます。

しかし株価が落ち着き始めた後の114日、中間期決算延期が発表され、株価は再び下落開始、翌週明けには「巨額飛ばし」が判明、連日比例配分のストップ安が続きます。ようやく11日(金)になって場中に値が付き、その場中、一時大きく買い戻されるも、結局終値は前日比5%近く下げて引けました。過去20年間のチャートで見る限り最安値となっています。

今回の事では株価が大幅下落の後、一時落ち着つくも、その後のニュースで再下落、連日のストップ安となっています。そして値が付いた後も買戻しは進みませんでした。これは事の全容を株価はまだ織り込んでいないことを示していると言えるでしょう。

今後は、破綻処理の際、オリンパスブランドは高値で競られ、それを勝ち取る価格が安いか、あるいは誰よりも早く、全賠償責任を負う覚悟の上でTOBに踏み切る方が安いかということになります。そこに腕に覚えのあるギャンブル投資家を交え、今後しばらくの間このような狭間で株価は揺れ動くことになるでしょうか。