2010年2月7日

人民元切上げとハイチ支援

人民元切上げ、中国政府は既にその覚悟ができているに違いない。今はそのタイミングを「温存」しているかのように見える。

経済危機以前に人民元を切り上げたのなら、欧米は「当然のことだ」との論調を世界に発したに違いない。日本もそれに同調する。しかしながら欧米経済がぐらつき、外からの助けを必要とするタイミングで人民元切上げたのなら、世界は「中国に助けられた」という気持ちなる。中国政府はそんなタイミングを待っているように思える(しかしながらここに来て、中国政府は現在の過熱経済を鎮静化しようと行動を取り始めている。よって先のタイミング以前に、自国経済の便宜上、切上げを早める可能性も高まっている)。

中国は世界一の米ドル債権国。米国経済にとって最重要国の一つである。それほどの経済的重要国に対し、通貨を切り上げないからと言って安易な制裁など発動できるはずもない。仮に何らかの制裁が発動されたところで、中国が大きく動じることも考え難い。

中国政府の言葉通り、中国が「覇権主義」を取ることはない。覇権主義の維持には多大な労力とリスクが伴う。覇権主義を取るかのような振る舞いは「外交」の枠を出ない。日本が欧米の「食い物」にされた失敗を良く見ている中国は、自国の自由な発展のため、必要とあらば米国に「ノー」と言わなくてはならない。アジア最後の経済フロンティアと言われるミャンマーも、世界との国交が始まれば日本型の経済大国になりたいとは思わない。それには強国とある程度の「対等」な関係が必要であり、時に軍施設を誇張して披露することも有効である。中国は、米国に「ノン」と言って来たもう一つの国、フランスの対米外交を深く研究しているに違いない。

米国やその他、世界に影響力を持つ国々と対等な関係を保つには、軍施設の誇示だけでなく、国際的な尊敬を獲得しなくてはならない。中国はハイチへ一番乗りで支援に向かった。地震発生からわずか30時間後には、救援隊は地球の裏側へ到着しているのである。これは驚愕に値する。(日本は6日、ようやく第1次隊を羽田から送り出したとのことであるが、これもまた逆の意味で驚愕もの)。

この中国のハイチ支援は「自国PKO特派員の救出」や、「対台湾政策」などと言う論調も聞かれるが、それだけでこの「スピード」を得られるはずがない。救援隊の迅速な派遣には日頃の十分な準備が整っていて初めて可能となるはずである。これは世界に対し大きなインパクトを与えたが、これまでそのスピードを世界に披露してきたフランスが、今回一番驚かされたのかもしれない。

さらにこの両国の外交基本姿勢は「徹底的な対話」である。そうした姿勢を大々的にアピールすることはないが、度々米国との「密談」が囁かれるように、「裏口」をノックされればドアを開けるのが中国外交が持つ側面である。

軍事力を対外的に誇る姿勢は純粋に「存在感と防御力」を世界に示すためであり、「中国人民軍脅威論」などは、北朝鮮脅威論とともに、日米が自国の国防費捻出を円滑にさせることを狙ったプロパガンダに過ぎない。 

これまで欧米一辺倒であった世界のメインストリーム。今世紀は中国の存在の高まりとともに、またアジアが世界をリードする時代が来てもいいではないか。日本国民には、欧米に媚びることなく、アジア人種であることを思い出してもらいたいものである。