2010年11月7日

中国復興とドル安の定着 1

中国当局が「米国債を売る」と発言したら世界はどうなるだろう。

昨年、中国の米国債保有が日本を抜いたと耳にした時、私はそんな不安を抱いた。さらに数週前、日経で「中国政府内に円高誘導論」という記事を目にした時、国債売りとは逆の発想ではあるが、「ドルより円が先か!」と一瞬ドキッとした。実際にこんなことがあるかどうかは別として、一つ言えることは、日中は互いの産業に大きな影響力を持ちつつも、他方の未来を握っているのは中国側だけではないだろうか。

過去に「ドル円」が70円台を付けたのは、時の総理であった橋本氏の発言がきっかけとなったとされているが、同様のことを中国当局が発言した場合、対ドルで上昇するのはドルペッグ型の中国元はなく、米国第二の債権国である日本国通貨、円ではないだろうか。

ドル円は暴落し、「1ドル50円」なんていうことが本当にあるかもしれない。中米の経済成長に依存するだけの成長シナリオしか持たない今の日本では、実質的なダメージ以上のパニックに陥る可能性が高い。

さらに中国が日本国債を大量保有していたらどうなるだろう。中国要人が「日本国債を売ろうか」などと言ったらどうなるだろうか。円高パニックの最中、一転、円、日本国債は大暴落に向かう。現状の日本ではその不安定さを吸収しきれず、一年を待たずしてデフォルト路線に入ってしまう。

米国債売り発言で、米国がデフォルトに陥ることはあり得ない。しかし日本は違う。軍国体制が終わってわずか65年。非常に若い民主国である。これまでの官僚主導の国家体制を見ていると、こうしたパニックから自力で回復できる程の態勢が整っているのはとても思えない。

最近の中国の強気な言動を見ていると、日本の運命を握り始めたことへの自信の現れではないかと考えてしまう。これは同時に、日米安保の真価を日米両国に問いかけるものでもある。

国家の最重要政策である国防を米国に掌握させ続けたツケが、今の政治的膠着感となって現れている。仕方がない、独立を目論んだ者の行くつくところは既に決まっているからだ。田中角栄、小沢一郎、次に独立を目論む政治家が出て来るのはまた30年後かもしれない。

私は日本の独立を対等の立場でサポートし得る強国は、実は中国しかないのではないかと考えているが、日本国民はその「対等な関係」を望んでいない。これも戦争大国米国のプロパガンダが、皮肉も奏功している証しであり、米国従属主義から抜ける事は当面ないと言える。