2010年11月7日

中国復興とドル安の定着 2

米国債売り発言で仮に「ドル元」が下落したとしても、中国にはその損失を確定してまで米国債を売り急ぐ理由は見当たらない。表向きには「我が国に大きな損失が発生している」などと発しつつも、本音は債権者の立場を最大限利用し、米国の経済政策に注文を付けたいに違いない。「物を言う株主」ならぬ、「物を言う債権者」である。中国は最初からこのようなシナリオを描いていたのかもしれない。

中国の経済面での強気な姿勢は、単に通貨の切上げ要求をかわす狙いがあるのかもしれないが、「元」の自由化と米国債の売却を同じタイミングで行いたいと図っているのではないかと考えることがある。中国もそれ相応の含み損を膨らませる事になるが、これらを同時に行うことによりマネーの流れが一気に中国に向かう。名実ともに世界の中心に返り咲くシナリオである。

話しが逸れるが、私は世界史上、最悪最低でありながら成功に至ってしまったテロリズムは、英国の清国に対するアヘンテロ」であると考えている。アヘン漬けにされ、世界の小国らに国家を蝕まれ、その地位を追われたつい100200年ほど前の記憶を、単に「繰り返してならない過去」と片付けるのだろうか。「その意を悪んで、その人を悪まず」とは孔子の言葉であるが、中国は果たしてそのような心構えでいるだろうか

米国の多額の債務は債権国に対する「弱み」と言える。米国人気が継続するであろう時には問題ではないが、パックスアメリカーナの終焉、米国人気が相対的に下がり続ける時代である。今後これは同国の「債権ビジネス」が成り立たなくなることを示唆している。

米ドルの地位低下の度合いを少しでも和らげるためには、米国は先手を打って「通貨バスケット」等、「基軸通貨体質」からの脱却を自ら図る必要がある。放置すれば、通貨バスケットを通り越し、ポンドからドルへ移行した時のようなことが起こるかもしれない。仮にそんなことが起これば、日本が保有する米国債はその価値を半減させ、日本の財政を揺るがす事態に陥ることは必至である。


注:自己の他ブログサイトより転記